「東司の作法」「もしその間に、僧たちがきたって並ぶような時には、手を合わせて挨拶するがよい。挨拶するには、必ずしも相向かって身をかがめず、ただ合わせて手を胸のまえにあてて、、一礼の様子をしめすだけでよい。東司にあって、衣を着ていない時でも僧たちに会をば一礼の様子をなすべきであり、もしまだ両手とも局部に触れない時、あるいは両手ともなにももっていない時には、両手を合わせて一礼するがよく、もしすでに片手を触れた時、もし片手になにかもっている時には、他の片手で挨拶するがよい。片手で挨拶するには、掌をあおむけて、指さきをすこしかがめ、水をすくうようにして、頭をすこし下げる様子をして挨拶するのである。向こうがそうしたならば、こちらもそうするがよい。自分がそうすれば、向こうもそうするのであるろう。」(道元:正法眼蔵・洗浄)

原文「このあひだ、衆家きたりてたちつらなれば、叉手して揖すべし。揖するに、かならずしもあひ曲躬せず、ただ叉手をむねのまへなあてて、気色ある揖なり。東司にては、直裰を著せざるのも、衆家と揖し気色するなり。もし両手ともにいまだ触せず、両手ともにものをひさげざるには、両手を叉して揖すべし。もしすでに一手を触せしめ、一手にものを揖せらんときは、一手にて揖すべし。一手に揖するには、手をあふげて、指頭すこしきかがめて、水を掬せんとするがごとくしてもちて、頭をいささか低頭せんとするがごとく揖するなり。他かくのごとくせば、おのれかくのごとくすべし。おのれかくのごとくせば、他またしかあるべし。」