「東司の作法」「褊衫および直綴はぬいで手巾のかたわらに掛ける。その仕方は、直綴をぬいで、ふたつの袖をうしろで合わせ、両方のわきを下を取り合わせて引き上げば、ふたつの差でがかさなる。そのとき左手で直綴の首のうらのもとをとり、右手でわきを引き上げると、ふたつの袂と両襟とがかさなる。両袖と両襟をかさねてまた縦にふたつに折って、直綴の首を竿のかなたに投げこす、すると、直綴のすそと袖口とは竿のこなたにかかる。ちょうど直綴の腰のあたりが竿にかかることになる。つぎに、竿にかけておいた手巾のあちらとこちらの両端をひきちがえて、直綴の向こうがわにまわし、手巾のかかっていない反対側でまたちがいに結びとめる。二度三度もたがいちがいに結んで直綴が竿から落ちないようにするのである。そこで直綴に向かって合掌する。つぎに襷を取って両臂にかける。そこから便所にいたって、桶に水をもり、それを右手にさげて廁牀にのぼる。桶に水をもるには、一杯にみたしてはならぬ。九分を限度とする。廁の入り口では、履き物をかえるがよい。廁の蒲草履をはいて、自分の草履は入り口でぬぐのである。これを換鞋という。」

原文「褊衫および直綴を脱して、手巾のかたはらにかく。かくる法は、直綴をぬぎとりて、ふたつのそでをうしろへあはせて、ふたつのわきのしたをとりあはせてひきあぐば、ふたつのそでかさなれる。このときは、左手にては直綴のうなじのうらのもとをとり、右手にてはわきをひきあぐれば、ふたつのたもとと左右の両襟とかさなるなり。両袖と両襟とをかさねて、又たたざまになかよりをりて、直綴のうなじを淨竿の那辺へなげこす。直綴の裙ならびに袖口等は、竿の遮辺にかかれり。たとへば、直綴の合腰、淨竿にかくるなり。つぎに、竿にかけたりつる手巾の遮那両端をひきちがへて、直綴よりひきこして、手巾のかからざりつるかたにて、又ちがへてむすびとどむ。両三帀もちがへちがへしてむすびて、直綴を淨竿より落地せしめざらんとなり。あるいは直綴むかひて合掌す。つぎに絆子(ばんす)をとりて両臂にかく。つぎに淨架にいたりて、淨桶に水を盛て、右手に提して淨廁にのぼる。淨桶に水をいるる法は、十分にみつることなかれ、九分を度とす。廁門(しもん)のまへにして換鞋(かあい)すべし。蒲鞋(ほあい)をはきて、自鞋を廁門の前に脱するなり。これを換鞋といふ。」