東司の作法「禅苑清規にいわく「東司に上らんと欲せば、まさに須べからく預め往くべし。時に臨んで逼迫し倉卒を致すことなかれ。すなはち袈裟をたたんで、寮中の案上あるいは淨竿のうえに案ぜよ」厠のなかに入ったならば、左手で扉をとざす。づに、桶の水をすこしばかり槽内にうつす。ついで桶を正面のその位置におく。つぎに、立ったまま槽にむかって指をならすこと三度するがよい。そのとき左手は、拳にして左の腰につけておく。つぎに袴の口、衣の角をおさめて、門にむかい、両足で槽の入り口の両端を踏んで、蹲んで用を足す。両端をよごしてはならない。前後にかけてはならない。その間は黙然としているがよい。壁をへだてて語り、あるいは笑ったり、声をあげて歌ったりしてはならない。鼻汁などをその辺りにふるまいてはならない。ひどくいきんではならない。壁に字をかいてはならない。厠のへらをもて地面をついてはならない。」(道元:正法眼蔵・洗浄)
原文「禅苑清規云、「欲上東司、応須預往。勿臨時内逼倉卒。乃畳袈裟、安中案上、或寮中案上、或い淨竿上」厠にいたりて、左手にて門扇を掩す。つぎに淨桶の水をすこしばかり槽裏に瀉す。つぎに淨桶を当面の淨桶位に安ず。つぎにたちながら槽にむかひて弾指三下すべし。弾指のとき、左手は拳にして、左腰につけてもつなり。つぎに袴口・衣角をおさめて、門にむかひて両足に槽脣の両辺をふみて、蹲踞しす。両辺をけがすことなかれ。前後にそましむることなかれ。このあひだに、黙然なるべし。隔壁と語笑し、声をあげて吟詠することなかれ。涕唾狼藉なることなかれ。怒気卒棒なることなかれ。壁面に字をかくべからず、厠躊をもて地面を劃することなかれ。」