「東司の作法」「大小便のあとにはへらを用いるがよい。また紙を用いることもあるが、故紙を用いてははならない。字を書いた紙を用いてはならない。また、へらも用い方をわきまえねばならない。へらは長さハチスンにして三角につくる。大きさは手の拇指大である。漆に塗ったものもあり、塗らないものもある。用いたへらは、籌斗になげこんでおく。まだ用いぬへらはまえから籌架にある。籌架は槽の前の板のさきのあたりにある。へらを使い紙をつかったのち、洗浄する仕方は、右手に桶をもって、左手をよくぬらしてのち、その手をしゃくうの形にして水を受け、まず小便を洗浄すること三度、つづいて大便を洗う。作法のごとく洗浄して清潔にするがよい。その間、あらあらしく桶をかたむけて、もずを手の外にこぼし、水をはやく失ってはならない。」(道元:正法眼蔵・洗浄)
原文「屙屎退後(あしたいご)、すべからく使籌すべし。又紙をもちいる法もあり。故紙をもちゐいるべからず。字をかきたらん紙をもちゐるべからず。淨籌(じようちゅう)・触籌(そくちゅう)わきまふべし。籌はながさ八寸につくりて三角なり。ふとさは手拇指大なり。漆にてぬれるものもあり。未漆なるもあり。触は籌斗になげおき、淨はもとより籌架にあり。籌架は槽のまへの板頭(はんとう)のほとりにおけり。使籌・使う紙ののち、洗浄する法は、右手に淨桶をもちて、左手をよくぬらしてのち、左手を掬につくりて水をうけて、まず小便を洗浄す、三度。つぎに大便をあらふ。洗浄如法にして淨潔(じょうけつ)ならしむべし。このあひだ、あらく淨桶をかたぶけて、水をして手のほかにあましおとし、あふれちらして、水をはやくうしなふことんかれ。」
淨籌(じようちゅう)・触籌(そくちゅう)とは、籌は木片または竹べらをいう。それを「くそかきべら」いまたもちいらないのを淨籌(じようちゅう)という。既にもちいたものは触籌(そくちゅう)という。