東司の作法「厠のなんの洗浄には、冷水がよいとされる。熱湯は腸の風をひきおこすという。手を洗うには温湯をもちいるもさまたげない。釜を一つおくのは、湯をわかして手を洗うためである。「禅苑清規」にも「晩後湯を焼き油を上せ、つねに湯水をして相続せしめ、大衆をして動念せしむることなかれ」とある。だから、湯・水ともに用いるものと知られる。もし厠の中に糞のつくようなことがあれば、扉を閉ざして「落桶」の札を掛けるがよい。そのような札のかかった便所には入ってはならない。もし先に入っていても、外の人があって指を鳴らしたならば、しばらく出るがよい。(道元:正法眼蔵・洗浄)

原文「厠中の洗浄には、冷水をよろしとす。熱湯は腸風をひきおこすといふ。洗手には温湯をもちゐる、さまたげなし。釜一隻をおくことは、熱湯洗手のためなり。清規云「晩後熱湯上油、常冷温水相続無使大衆動念」。しかあればしりぬ。温水ともにもちゐるなり。もし厠中の触せることあらば、門扇を掩して触牌をかくべし。これらの牌かかれらん局には、のぼることなかれ。もしさきより厠上にのぼらんに、ほかに人ありて弾指せば、しばらくいづべし。」