基本は莫作「その諸悪を作すことなかれというのは、凡夫がみずから思いめぐらして、そのように思うのではない。仏の智慧が説かれているのを聞いていると、自然にそのように聞こえるのである。そのように聞こえるのが、最高の智慧をことばにいいあらわした表現である。すでに智慧の言葉であるから、智慧を語っているのである。最高の智慧が説かれ、それが聞かれて、その力にひかれて諸悪莫作と願い、諸悪莫作と行なっているうちに、いつしか諸悪莫作が作られないようになる。それが修行の力の実現というものである。その力の実現は、あらゆる処、あらゆる世界、あらゆる時、あらゆる事にわたって成るのであるが、その基本はいつも莫作である。(道元:正法眼蔵・諸悪莫作)
原文「この諸悪をつくることなかれといふ、凡夫のはじめて造作してかくのごとくあらしむらにあらず。菩提の説となれるを開教するに、しかのごとくにきこゆるなり。しかのごとくきこゆるは、無上菩提のことばにてある道著なり。すでに菩提語なり、ゆゑに語菩提なり。無上菩提の説著となりて聞著せられるに転ぜられて、諸悪莫作とねがひ、諸悪莫作とおこなひもてゆく。諸悪すでにつくられずなりゆくところに、修行力たちまちに現成す。この現成は、尽地・尽界・尽時・尽法を量として現成するなり。その量は、莫作を量とせり。」
「望之似木鶏」「これを望めば木に鶏たり-荘子」「ただ黙ってにらみを聞かせるの徳をそなえよ」