袈裟の洗い方「袈裟の洗い方は、袈裟をたたまず、そのまま洗い桶に入れ、よく沸かした湯をもってこれをひたし、一時間ばかりおく。また別の法は、清らかな灰水浣を良く沸かし、それに袈裟を浸して、湯のつめたくなるをまつ。いまは世のつね灰湯をもちいる。灰湯はここでは「あくのゆ」という。そのあくの湯がさめたならば、清く澄んだ湯をもってたびたびこれを濯ぎ洗う。その間には、両手をいれて擵み合わせず、また足で踏んではならない、垢がとれ脂がとれれば、それで終わりとする。そののち、沈香や栴檀香などを令水にまぜてまた洗う。それから竿に欠けて干す。よく乾いたならば、ていねいに摺んで高処におき、焼香・散華して、右廻りに数回まわり、れ支配したてまつる、礼拝は三拝、あるいは六拝、あるいは九拝して、跪いて合掌し、さて袈裟を両手にささげて、口に偈をとなえ、それから作法のごとくにして着用する。」(道元:正法眼蔵・袈裟功徳)

原文「浣袈裟法  袈裟をたたまず、淨桶にいれて、香湯を百沸して、袈裟をひたして、一時ばかりおく。またの法、きよき灰水を百沸して、袈裟をひたして、湯のひややかなるをまつ。いまはよのつねに灰湯をもちゐる。灰湯ここにあくゆといふ。灰湯さめぬれば、きよくすみたる湯をもて、たびたびこれを浣洗するあひだ、両手にいれてもみあらはず、ふまず。あかのぞこほり、油のどこほるを期とする。そののち、沈香・栴檀香等冷水に和してこれをあらふ。そののち、淨竿にかけてほす。よくほしてのち、摺襞(しゅうへき)して、たかく安じて、焼香散華して、右遶数帀(うにょうすそう)して礼拝したてまつる。あるいは三拝、あるいは六拝、あるいは九拝して、胡跪合掌して、袈裟を両手にささげて、くちに偈を誦してのち、たちて如法に著したてまつる。」

摺襞とは「たたむ」の意