「また、衆生ありてたがいに和合せず、怨恨の思いをおこして闘争を展開し、あるいは、天・龍・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺籮伽・狗弁茶・毘舎遮・人および非人が、たがいに相争っていても、もし彼らがこの袈裟を念ずれば、袈裟の力によって、たちまち悲心を生じ、柔軟の心を生じ、怨恨なき心、悪行に克つ善心を起こして、ひるがえって清浄なることを得るでありましょう。また、人ありて、たとい戦争や闘争や裁判ごとの中にあっても、もし袈裟の一片をも持してその中にいたり、己を護らんがために供養し恭敬し尊重するならば、人々は彼を侵し、嬈(まど)わし、軽んずることをえず、つねに相手に勝って、その難をまぬかれることを得るでありましょう。(道元:正法眼蔵・袈裟功徳)

原文「若有衆生、共相違犯、起怨賊想、展転闘諍、若諸天龍・鬼神・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺籮伽・狗弁茶・毘舎遮・人及非人、共闘諍時、念此袈裟力、尋生悲心・柔軟之心・無怨賊心・寂滅之心・調伏善心、還得清浄。在人有人若在兵甲・闘訟・断事之中、持此袈裟少分、至此輩中、為自護故。供養恭敬尊重、是諸人等、無能侵毀触嬈軽弄。常得勝他、過此諸難。」