「その時、宝像如来は金色の右手をのべて大悲菩薩の頭をなで、讃歎していった。「よいかな、よいかな、雄々しき丈夫よ。汝のいうところはまことに珍しく、かつ善いことである。汝が正覚を成ずる時には、この袈裟衣はかならず五事の功徳を成就して、おおいなる利益を作すであろう。」その時、大悲菩薩は、仏の讃歎のことばを聞いて、心に歓びを生じ、踊躍することかぎりなかった。また、ふと仏ののべたもう金色の右手をみると、その指はすらりとして、その手の柔らかなること天衣のごとくであった。そして、その頭をなでおわった時、その身は変じて、あたかも二十歳の童子のようてあった。よき男子たちよ、その座にあった聖衆、ならびに、もろもろの天・龍・神・乾闥婆・人およぴ非人たちは、手を胸のまえに合わせて、大悲菩薩のためにもろもろの花を供養し、あるいは伎楽を奏し、あるいはいろいろの讃辞をささげ、おわると黙然としてその座にあった。」(道元:正法眼蔵・袈裟功徳)

原文「善男子、爾時宝像如来、申金色右臂摩大悲菩薩頂讃言「善哉善哉、大丈夫、汝所言者、是大珍宝、是大賢善。汝成阿耨多羅三藐三菩提已。是袈裟服、能成就此五聖功徳、作大利益。」善男子、爾時大悲菩薩摩訶薩聞仏讃歎已、心生歓喜勇躍無量。因仏申す此金色之臂、長作合縵。其手柔軟、猶如天衣。摩其頭已、其身即変状如童子二十人。善男子、彼会大衆、諸天・龍神・乾闥婆・人及非人、叉手恭敬、向大悲菩薩、供養種種華、乃至伎楽而供養之。復種種讃歎黙然而住。」