「袈裟の製作」「袈裟をつくるには粗い布を持ってするのを根本とする。粗い布のないときには、細糸の布をむもちいいる。粗い布も細糸もないときには、絹の白絹をもちいる。絹も綿布もないときには、綾ぎぬをもちいる。如来の許すところである。絹・綿・綾・羅などの類のすべてない土地では、ょらいはまた皮の袈裟をもゆるされた。全て袈裟は、青・黃・赤・黒・紫野色に染めるがよい。いずれの色も鮮やかならぬがよい。如来はいつも肉色の袈裟をつけていたが、それは伽裟色である。初祖が伝えられた袈裟は青黒色であり、西の方でいう屈眴の布であった。いまも曹谿山にある。西の方天竺では二十八代伝え、中国では五代伝えた。いま曹谿古仏の遺弟たちは、みな袈裟の故実を伝え持している。他の僧の及ばぬところである。(道元:正法眼蔵・袈裟功徳)
原文「袈裟をつくるには、麤布(そふ)を本とする。麤布なきがごときは、細布をもちいる。麤布の布ともなきときには、絹素(けんそ)をもちゐる。絹・布ともになきがこときは、綾羅(りょうら)等ほもちゐる。如来の聴許なり。絹布・綾羅等の類すべてなきくにには、如来また皮袈裟を聴許しまします。おほよそ袈裟、そめて青黃赤黒紫色ならしむべし。いずれの色のなかの壊色(えじき)ならしむ。如来はつねに肉色の袈裟を御しましませり。これ袈裟色なり。初祖相伝の仏袈裟は青黒いろなり。西天の屈眴布(くつじゅんふ)なり。いま曹谿山にあり。西天二十八伝し、震旦五伝せり。いま曹谿古仏の遺弟、みな仏衣の故実を伝持せり。余僧のおよぱざるところなり。」