袈裟の十勝利「世尊は智光比丘に告げていった。「法衣は十の勝利をうる。一には、よくその身を覆って、羞恥をはなれ、慚愧を具して、善法をすることを得しめる。二には、寒熱および蚊・虫・悪獣・毒虫の難をはなれて、安穏に修道為ることを得しめる。三には、出家沙門の相貌を示現して、見る者をして歓喜せしめ、邪心を離れせしめる。四には、袈裟は人天の勝れた宝たことをあらわす印であるから、これを尊重し敬礼すれば梵天界に生ずることを得しめる。五には、袈裟を著ければ、すぐれたる旗幟をひるがえすに等しく、よくもろもろの罪を滅し、もろろの福徳をあらしめる。六には、元元袈裟を制するには、染めて壊色ならしめ、五欲の思いを離れ、執着を生ぜらしめる。七には、袈裟は仏の淨衣なるがゆえに、ながく煩悩をはなれて、欲功徳を生ぜしめる。八には、身に袈裟を著ければ、罪業は生滅して、念々らに十善は増長する。九には、袈裟はなお良田のことくにして、よく菩薩のわざを増長せしめる。十には、袈裟はなお甲冑のごとくにして、煩悩の毒箭もこれを害することができない。(道元:正法眼蔵・袈裟功徳)
原文「世尊告智光比丘言「法衣得勝利。一者、能覆其身、遠離羞恥、具足慚愧、修行善法。二者、遠離寒熱及以蚊虫・悪獣・毒虫、安穏修道。三者、示現沙門出家相貌、見者歓喜、遠離邪心。四者、袈裟即是人天宝幢之相。尊重敬礼、得生梵天。五者、著袈裟時、生宝幢想、能滅衆罪、生諸福徳。六者、本制袈裟、染令壊色。離五欲想、不生貪愛。七者、袈裟是仏淨衣。永断煩悩作良田故。八者、身著袈裟、罪業消滅、十善業道、念念増長。九者、裟猶猶如良田。能善増長菩薩道故。十者袈裟猶如甲冑。煩悩毒箭、不能害故。」