「袈裟をかえりみてその容姿をつつみ俗塵に染まざればこれ真の沙門なり 諸仏はこれを称えて良田となす これまさる衆生の利益はない。 袈裟の力はまこと不思議にして よく菩提を植うるの行を修せしむ 志を増長せしむること春の苗のごとく 智慧のみのりは秋の過日のごとし 堅いこと金剛のごとき甲冑となり 煩悩の毒箭(どくや)をして害する能わざらしむ われいま略説してこの十の勝利をとく 広説(こうぜつ)すれば歴劫(れきごう)もなお足りぬであろう もし龍ありてその一縷を身につければ 金翅鳥(こんじちょう)の餌食となるを免れるという もし海を渡る人この衣を持せば 龍魚やもろもろの悪霊の難をおそれず 雷電霹靂(らいでんへきれき)して天の怒ることあるも 袈裟をつけたる者は恐るることんし 在家者もまたよく袈裟を受持すれば 一切の悪鬼はよく近づくことあらじ もしまた発心して出家の道をもとめ 世間を厭い離れて仏道を行ぜんには十万の魔宮はことごとく震動して その人はすみやかに仏となるであろう。」
原文「粛容致敬真沙門、所為不染諸塵俗。諸仏称讃為良田、利楽群生此為最。袈裟神力不思議、能令修植菩提行。道芽増長如春苗、菩提妙果類秋実。堅固金剛真甲冑、煩悩毒箭不能害。我今略讃十勝利、歴劫広説無有尽。若有龍身披一縷、得脱金翅鳥王食。若人渡海持此衣、不怖龍魚諸鬼難。雷電霹靂天怒披袈裟者無恐畏。白衣若能親捧持、一切の悪鬼無能近.若能発心求出家、厭離世間修仏道。十方魔宮皆振動、是人速証法王身」