「この十勝利はひろく仏道のもろもろの功徳をあつめていめる。その散文につき、また韻文について、それらの功徳をよくよく学がよい。披らいて一読すれば早々にさしおくのではなく、一句一句についてよくよく吟味してみるがよい。そこに語られるすぐれた功徳は、ただ袈裟だけの功徳であって、修行者がながい修行ののちに得るというようなものではない。いまの仏のことばにも「袈裟のちからまことに不思議にして」とある。一般の人やまだ修行の途中にあるものの測り知るところではない。その人が「すみやかに仏となる」時には、かならず袈裟を着けているのである。袈裟つけずして仏真身を成ずることをえたものは、古来いまだかってあらざるところである。」(道元:正法眼蔵・袈裟功徳)

原文「この十勝利、ひろく仏道のもろもろの功徳を具足せり、長行偈頌にあらゆる功徳、あきらかに参学すべし。披閲して速にさしおくことなかれ、句句にむかひて久参すべし。この勝利は、ただ袈裟の功徳なり、行者の猛利恒修のちかにあらず。仏言、袈裟神力不思議、いたづらに凡夫賢聖のはかりしるところにあらず。おほよそ速証法王身のとき、かならず袈裟を著せり。袈裟を著せざるものの、法王身を証せること、むかしよりいまだあらざるところなり。」