「釈迦牟尼仏は、その十二年のあいだ、瞬時も袈裟をはなされたことはなかった。いまわれらはその遠き弟子である。それを学ばねばなるまい。いたずらに、名利のために、天を拝し、紙を拝し、王を拝し、臣を拝していたその頭をめぐらして、よく仏衣を推し頂くにいたったならば、まことに喜ぶべきことではある。
時に仁治元年冬のはじめの日、観音導利興聖林寺にありて衆に示す。」
原文「釈迦牟尼仏、十二年中頂戴してさしおきましまさざりき。すでに遠孫なり、これを学すべし。いたずらに名利のために、天に拝し、王を拝し臣を拝する頂門をめぐらして、仏衣頂戴に回向せん、よろこぶべきなり。」ときに仁治元年庚子開冬日、在観音導利興聖林寺示衆。」
釈尊は一九歳出家三十にして成道したとの説。いまその修行中の十二年をあげている。成道後の仏陀がなお三衣一鉢あったこというまでもない。