「しかるに、かの国の歴代の国王たちのなかには、あわれむべし、おのが国にそのような重き宝のあることを知らぬものもあった。だから、ともすれば、道士の教えに惑わされて、仏法を廃棄した者もすくなくない。その時には、袈裟はかけず、円い頭に布巾をいただいた。その講ずるところは、寿を延ばし、なが生きする方法であった。そんなのが唐にもあり、宗にもあった。そのような輩は、たとい国王であっても、人民よりも卑しいはずである。静に観察してみるがよい。」

原文「あはれむべし、よよに国王とんれるやから、わがくにに重宝のあるをしらざること。ままに道士の教えにまどはされて、仏法を廃せるおほし。その時、袈裟をかけず円頂に葉布をいただく。講ずるところは、延寿長年の方んなり。唐朝にもあり。これらのたぐひは、国王なりといへども、国民よりもいやしかるべきなり。しずかに観察しつべし。」