「仏衣の種類8」「あるいはまた、袈裟は吉祥の服であって、これを着用している者は、かならず勝れた境地にいたるという。おおよそこの世界には、僧伽梨枝の現れざる時はないのである。ある時に現れるというのは、長い長い時間のなかのことであるが、長い長い時間のなかのこととは、またある時に現れることである。袈裟を得るということは、仏のしるしを得ることである。そのゆえ、諸仏如来にして、いまだ袈裟を受持せざるはない。また、袈裟を受持する者にしていまだ仏となることをえないものはないのである。」(道元:正法眼蔵)

原文「あるいはいふ、袈裟はこれ吉祥服なり。これを服用するもの、かならず勝位にいたる。おほよそ世界に、この僧伽梨衣に現前せざる時節なきなり。一時の現前は長劫中事なり、長劫中事一時来なり。袈裟を得するは、仏標幟を得得するなり。このゆゑに、諸仏如来の袈裟を受持せぞる。いまだあらず、いまざにあらず、袈裟を受持せしともがらの作仏せざる、あらざるなり。」