「坐禅についての疑問にこたえる2」「これが仏法の直々の相伝であることは、まったくかくれもないことである。如来はむかし、霊鷲山上の集会の席上において、正法の眼目、涅槃の妙心という最高の大法を、ただひとり迦葉尊者にだけ付与せられた。その儀式のありようは、現在なお天上界にあるひと人々のなかには、まのあたりに見たものもあって、疑うべからざるところである。いったい、仏法というものは、かの天上界の住みびとたちの永久に護持するところであって、そのいさおは、いまもけっして古くなったわけではないのである。まさに知るがよい。これは仏道の全道なのであって、並べていうべきものではないのである。(道元:正法眼蔵)
原文「この仏法の相伝の嫡意なること、一代にかくれなし。如来むかし霊山会上にして、正法眼蔵涅槃妙心無上の大法をもて、ひとり迦葉尊者のみに付法せし儀式は、現在して上界にある天衆、まのあたりみしもの存せり、うたがうべきにあらず。おほよそ仏法は、かの天衆とこしなえに護持するものなり、その功いまだふりず。まさにしるべし、これ仏法の全道なり。ならべていふべきものなし。」

