「また、かの結界と称するところに住んでいる者たちは、十悪をおそれることもなく、十重戒などもみな犯している。いったい、そこは罪をつくる境界であって、罪を造らぬ人をきらうのであるか。さらに、逆罪は最も重しというのに、結界の地に住んでいる者は、その逆罪ををも造るらしい。そんな悪魔の世界は当然破るがよろしい。仏の教えを学ぶがよく、仏の世界に入るがよく、それが仏恩を報ずるというものであろう。いったい、そのような結界をつくったという古人は、結界の意味を知っていたかどうか。誰から相承したものなのか、誰から印可を受けたものであるか。」(道元:正法眼蔵・礼拝得髄)
原文「またかの結界と称するところにすめるやから、十悪をおそるることなし、十重つぶさにおかす、ただ造罪界として、不造罪人をきらふか、いはんや逆罪をおもきこととす。結界の地にすめるもの、逆罪もつくりぬべし。かくのごとくの魔界は、まさに破るべし。仏化を学すべし、仏会にいるべし。まさに仏恩を報ずるにてあらん。かくのごとくの古先、なんぢ結界の旨趣をしれりやいなや。たれよりか相承せりし、たれが印をかかうぶる。