「いわゆるこの所仏が結ぶ大海に入るものはす、諸仏も衆生も、大地も虚空も、ことごとく俗世の束縛を脱して、諸仏の妙法に帰するのである。だから、ひとたびこの境界に入る人々は、すべて仏の功徳を蒙るものとなる。思うがなるままになる功徳であり、清らかとなる功徳である。一処結すれば、たちまち法界がみな結せられ、一度結すれば、また全ての法界が結せられる。あるいは水をもって結する結界があり、あるいは心をもって結界することもあり、またあるいは空をもって結界することもあるが、それにはかならず相承し相伝するところがあって、それを知らねばならない。(道元:正法眼蔵・礼拝得髄)
原文「いはゆる諸仏所結の大界らいるものは、諸仏も衆生も、大地も虚空も擊縛を解脱し、諸仏の妙法に帰源するなり。しかあればすなはち、この界をひとたびふむ衆生しかしながら仏功徳をかうぶるなり。不違越の功徳あり、清浄の功徳あり。一方を結するとき、すなはち法界みな結せられ、一重を結するとき、法界みな結せらるるなり。あるひは水をもて結する界あり、あるひは心をもて結界することあれり、あるひは空ほもて結界することありし。かならず相承相伝ありてしるべきことあり。」