「袈裟の着方7」「他の国々の人は、仏衣が中国のように、自分の国にも正伝されることを、どんなにか願っていることであろう。自国に正伝がないことには、恥ずかしい思いをし、悲しむ心も深いであろう。まことに、如来世尊の衣法の正伝に遇うなどとは、宿世に植えた仏智のおおいなる功徳の種子によるものに他ならないからである。しかるに、いま末法の悪世にして、おのれに正伝なきことを恥じず、かえって正伝をそねむ輩のみかおおい。自己のいま有するところも住)(とど)まるところも、それは真実のおのれというものではない。ただ、正伝をただしく伝え受けるならば、それが仏法をまなぶ直道というものである。」(道元:正法眼蔵)

原文「他界の衆生は、いくばくかねがふらん、震旦国に正伝せるがごとく、仏衣まさしく正伝せんことを。おのれがくにに正伝さざること、はずるおもひあるらん、かなしむこころふかかるらん。まことに、如来世尊の衣法正伝せる法に値遇する、宿植般若の大功徳種子によるなり。いま末法悪時世は、おのれが正伝なきことをはぢず、正伝をそねむ魔党おほし。おのれが所有所在は、真実のおのれにあらざるなり。ただ正伝を正伝せん、これ学仏の直道なり。」