「仏衣の布材8」「そのむかし、かの黄梅山の夜半にあって、六祖慧能は仏の衣法をいただいて正伝した。それこそ、まことに正法と仏衣の正伝であった。五祖がよく人物を見る目があったからである。小乗のの聖者や、三賢・十聖のたぐい、あるいは、教家の論師・経師であったならば、おそらく神秀にさずけて、慧能には伝えなかったであろう。だが、仏祖をえらぶ時には、はるかに凡情を超えるのであるから、慧能が六祖となったのである。代々の仏祖が人を知りおのれを知っている趣きは、いい加減におし測りうるところではないのである。(道元:正法眼蔵)
原文「むかし黄梅の夜半に、仏の衣法すでに六祖の頂上に正伝す。まことにこれ、伝法伝衣の正伝なり。五祖の人をしるによりてなり。四果三賢のやから、および十聖等のたぐひ、教家の論師経師等のたぐひは、神秀にさづくべし、六祖に正伝すべからず。しかあれども、仏祖の仏祖を選する、凡聖路を超越するがゆゑに、六祖すでに六祖となれるなり。しるべし、仏祖嫡嫡の知人知己の道理、なほざりに測量すべきところにあらざるなり。」

