宗での体験「以前わたしが宗にあって、大衆の席にあって修行しておったころのこと、ふと隣のの席の僧をみると、彼は毎朝の起床にあたり、まず袈裟をささげて頭上に安じ、合掌して一偈を默誦していた。その時わたしは、いまだかってない思いを生歓びが身にあふれて、過激の涙がしきりに落ちて、衣の襟をふらした。そのゆえは、「阿含経」を披見したとき、袈裟を頂戴する文を見たことがあるけれども、その粗放がどんなものかは、なおはっきり判らなかった。しかるに、いま、その作法をまのあたりに見て、歓びにたえず、ひそかに思ったことであった。」(道元:正法眼蔵)

原文「予、在宗のそのかみ、長連牀に功夫せしとき、斉肩の鱗単をみるに、毎暁の開静のとき、袈裟をささげて頂上に安置し、合掌恭敬しき.一偈を黙誦す。ときに予、未曽見のおもひをなし、歓喜身にあまり、感涙ひそかにおちて襟をうるほす。阿含経を披閲せしてき、頂戴袈裟文をみるといへども不分暁なり。いまはまのあたりにみる。」