「最上無為妙術は端坐参禅なり1」もろもろの仏・如来はいずれもすぐれた教えを正伝して、最高の智慧を身につけるにあたっては、最上にして自然なすばらしい方法をもってなされる。それは、ただ仏から仏にさずけて、絶対に間違いないものであって、つまり、かの智慧の境地ただひとり悠々とひたりきるといったところである。これを自受用三昧という。しかるに、この三昧にあそぶにあたっては、端坐して参禅するを正しき門となす。この性質は、もともと人々の持ち前のなかにそなわっているものものであるが、なお修しなかったならば現れてこないし、身につけなかったならばわが物とはならない。だが、それを開発すれば、それはわが掌にあふれて、その数しらず、またこれを口に語れば、口いっぱいにあふれて、極まるところもない。もろもろの仏は、つねにその中に住んでいるけれども、どこにもなんの分別の跡をものこさず、また生きとし生ける者はいつでもその中に生かされているけれども、そのいとなみはどこにもその跡をあらわさない。」(道元:正法眼蔵)

原文「諸仏如来、ともに妙法を単伝して、阿耨菩提を証するに、最上無為の妙述あり。これはただ、ほとけ仏にさづけてよこしまなることなきは、すなはち自受用三昧その標準なり。この三昧に遊化(ゆけ)するに端坐参禅を正門(しようもん)とせり。この法は、人人に分上にゆたかにそなはれりといへども、いまだ修せざるにはあらはれず。証せざるにはうることなし。はなてばみてり、一多のきはならんや。かたればくちにみつ、縦横きはまりなし。諸仏のつねにこのなかに住持たる、各各まの方面に知覚をのこさず。群生(ぐんじょう)のとこしなへにこのなかに証する、各各の知覚に方面あらはず。」

阿耨菩提:仏の有する最高の智慧である。自受用三昧:自受用とは、功徳をみずから受用して、そのたのしみをみずからあじわうことである、三昧とは、その境地にひたりきっておることである。