(黄帝の鏡)「車を駆っていた黄帝は、膝行して崆洞にすすみ、広成子に道を問うた。その時広成子はいった。「鏡はこれ陰陽本、身を治むること長久である。これにおのずから三つの鏡がある。いわく天、いわく地、いわく人である。この鏡は視ることもなく、聴くこともい。心を内にいだいて静なれば、身おのずから正しい。汝もまた、必ず静に、必ず清らかにして、汝が身を労することもなく、汝が身を揺るがすことなければ、すなわち以て長生することをうるであろう」むかしは、この三つの鏡を持って、天下を治め、大道を修めた。この大道に明らかなる者を、天地の主とするのである。俗の言にも「大宗は人を鏡とした。天下の治乱はすべてこれによって知った」という。それは、この三つの鏡の一つを用いたのである。」(道元:正法眼蔵・古鏡)

原文「軒轅黄帝膝行進崆洞、問道乎広成子。于時広成子曰、「鏡是陰陽本、治身長久。自有三鏡、云天、云地、云人。此鏡、無視無聴。抱神以静、形将自正。必静必清。無労汝形、無揺汝精。乃可以長生」むかしはこの三鏡をもちて、天下を治し、大道を治す。この大道にあきらかなるを、天地の主とするなり。俗にいはく、「大宗は人をかがみとせり、安危理乱、これによりて照悉するといふ」。三鏡のひとつをもちゐるなり。」(道元:正法眼蔵・古鏡)